皆さま、こんにちは。EBISU・パートナーズ・ジャパンの平出でございます。

今回は、起業後に当社の新規事業として展開していたコワーキングスペース事業について記載させて頂きます。

■コワーキングスペースの概要・コンセプト

EBISU・パートナーズ・ジャパンは、2020年2月~2022年5月の間、東京都新宿区の神楽坂駅・江戸川橋駅の間のエリアでコワーキングスペース事業を運営しておりました。店舗の名前は「コワーキングスペース和と匠の時」という名称で、席数は38席+会議室内の12席、スペースの広さは約110㎡の規模でした。

コワーキングスペースのコンセプトは「健康志向」でした。

そのコンセプトにした理由は、私がビジネスマンとして働いてきて、働く中で生じるストレスや、ストレスを起因とした生活習慣の乱れにより病気を発症している方が一定数存在すると考えており、その課題を解消することで年々増加している日本の医療費を少しでも削減し、国民の税負担の軽減に繋がる様な活動をコワーキングスペース事業を通じて実施したいと考えたからです。また、(サラリーマンとして)株式会社メディカルクリエイト勤務時に赤字病院の再生支援をしていた際、病院戦略の方針検討のため注力すべき診療科の検討等をしていました。ハンズオンでの支援であったため、病院内に作業部屋を用意してもらい、そこで資料作成等をしていましたが、業務上関係する部署がある執務室に向かう際や、昼休みに病院の食堂へ行く際に、辛そうな表情で診察室前の椅子に座り診察の順番を待つ患者さんを日常的に見ていました。日が経つにつれて、クライアント病院の経営が改善されるためには、そもそも体調が悪い患者さんという存在がいる必要があるのだが、誰もが辛い状態(患者さん)になりたいとは思っているはずもなく、目の前で辛い表情をされている方々の不幸せな状況を減らすための活動が出来ないものかと考えるようになり、予防医療に関するビジネスをどこかのタイミングで実施したいと考えるようになりました。そこで、疾病の発生起点となる可能性が高い「働く」という行為に対して健康面でのケアに注力したコワーキングスペースを運営したいと考えて、その構想を実現しました。

なお、健康に関する具体的な取り組みは下記を実施しました。

「店内で提供する軽飲食は、無添加食品を販売」

「ファイテン社のルームリラクゼーションサービス(ルームシャワー)の導入」

「リラクゼーション・殺菌・抗菌作用のある青森ヒバチップの設置」

「空気・光に触れることで抗菌・抗ウィルス・消臭、等の効果を発揮する加工観葉植物の設置」

■開店準備

コワーキングスペース事業を始めるにあたり最初に行ったことは他社が運営しているコワーキングスペースの利用です。ドロップインサービス(1日だけの利用)を提供しているコワーキングスペースをリストアップして、現場訪問時のチェックリストを作成し、都内・神奈川県・千葉県内の他社店舗を30~35店舗程、1ヶ月の期間をかけてお客さんとして使用させて頂きました(2019年8月のタイミングです。)。最初に利用した店舗は、今はなきConnecting The Dots渋谷店さんです。当該店舗はトータルで10年近く運営されていましたが、新型コロナウィルスの影響や隣のビルの建て替えによる騒音、等の理由で2年ほど前に廃業されてしまいました。音の問題は私が運営していた際も課題として出てきた運営者を悩ませるトピックでした。。30店舗以上訪問すると運営コンセプトの違いが非常にわかりました。小規模でファミリー感・アットホーム感を感じる店舗や、大規模で利用者は黙々と作業をしている様な個人の時間を大切にしている店舗、内装・什器等に注力している店舗や、逆に、内装等を全く気にせず自由に運営している店舗、等。他の店舗を利用しながら、自分が運営したい店舗の雰囲気・広さ、等をイメージしていきました。

ある程度他店舗の雰囲気が掴めてきたら、次に、物件の選定を行いました。その時点で、座席指定がなく自由に会話が出来るフリーアドレスエリアと会話禁止で自分の座席を持てるサイレントエリアの2つを用意しようと考えていたので、少なくとも80㎡~100㎡以上は欲しいと考え、家賃は月40万円まで、最寄り駅から8分以内を目安に物件をチェックしました。業界歴の長い方は、家賃は1坪(約3.3㎡)あたり1.0万円以内に抑えるのが望ましいとおっしゃっていました。なお、大まかな立地を決めるにあたり、ターミナル駅エリアか住宅エリアか、で検討をまず入れました。ターミナル駅エリア(新宿駅・渋谷駅・東京駅、等。池袋駅エリアは比較的安い物件がありました)は家賃が総じて高く、この前までサラリーマンをしていた自分がカバー出来る家賃ではなかったので住宅エリアを念頭に物件を探しました。店舗物件を扱っているサイト(メジャー・マイナー問わず)で、めぼしい物件を見つけると、記載されている電話番号に電話をしましたが、不動産業界のあるあるにぶつかりました。電話をして担当者に確認すると、「この物件は募集終了しています。」との回答がいくつも返ってきました。閲覧者からの問い合わせを増やすために、わざと魅力的な物件で募集が終了した古い情報を掲載しているサイトがあるようです。あるいは、情報のメンテナンスをしていないサイトである場合もあります。なるほど~・・・と思いながら根気強く、今、タイムリーに募集がかかっている物件の担当者とコンタクトをとり、電話ごしに「この様な事業をしようとしていて、不特定多数の人の出入りがある。法人の登記も可能で24時間利用可能なサービスを提供したい。」等の要件を伝えたところ、物件のオーナーに確認してみる旨の返事を頂き回答を待ちました。すると、多くの物件で、「事前予約で利用者が特定されているなら良いが、不特定多数の人が出入りする業種はNG」「レンタル会議室の様な運営をされるのはNG」といった回答が物件オーナー側からあり、物件選びは相当大変なんだなと認識出来ました。また不動産仲介会社の担当者が物件オーナーに、どの様に説明をするのかが非常に重要で、物件オーナーへ話を持っていく前に、不動産仲介会社の担当者に、業種に対する正しい理解をして頂く等の認識合わせが重要であると感じました。また、不特定多数の方が利用すると伝えていたが、最終的には私の店舗の運営内容としては、(ドロップイン利用であろうが)完全予約制で、誰が利用するかは特定出来る形であったため、不特定多数の利用者がいる点で断られた物件については検討の俎上にあげられず勿体ないことをしたと今になってみれば感じます。店舗物件の場合、1階の路面店で交通量が多い場所だと、通行人の目に自然と入るので、認知量が圧倒的に違います。その結果、売上にも大きく影響します。ただ、この時点では完全予約制のシステムを構築できるか見通しが立たない状況であり、初めて予約制店舗の経営をする場合は厳しかったなと思います。上記の条件をクリアして現場を訪問したのは恵比寿駅エリア、本駒込駅エリア、赤羽駅エリア、代々木駅エリア、神楽坂駅・江戸川橋駅エリアの物件でした。物件決定にあたり迷ったのが本駒込駅エリアの物件です。広さや家賃は問題なく、ビル名に大手出版社の名称が入っていたので非常に魅力的でした。ただ、決めきれなかったのは、本駒込という場所に土地勘が無く、どんな職種の方が周辺に居住しているのか分からなかったことでした。偶然、候補物件の周辺に地域交流センターがあり、その職員の方にアポなしで本駒込というエリアについてヒアリングさせて頂いたり、街を散策したり、本駒込駅で駅利用者の観察をしたりして土地の理解に努めました。ただ、あまりにも街に人が少なく、とてもビジネスが成り立つ活気が感じられなかったことも断念した大きな理由でした。本駒込は高低差が激しい文京区の中でも高台に位置しており、グレードが高い住宅エリアのようですね。高級住宅街に見られる人が街にいない状態です。その点、近場で低地にある文京区・千駄木駅エリアは人通りも店舗も多く、賑わっていました。やはり下町って商売に適したエリアなんだなあと身を持って認識しました。街と人の関係性、その土地の歴史・背景は、この事業を通じて非常に興味が出た点です。最終的には神楽坂・江戸川橋駅エリアの物件にしました。決め手は、2014年からの2年間、神楽坂に住んでおり、土地勘があり、どんな方が居住しているエリアなのかが分かっている安心感があったからです。そして、家賃も大家さんと交渉させて頂き、1割引きの325,000円(税込)+水道代+電気代と、非常にリーズナブルであり、広さも約110㎡あり提供したいサービスが出来そうであったこと、住人の年代も男女共に30代、40代が多く、おおよそターゲット顧客がいるエリアであったことも大きかったです。デメリットは大通りから裏道に入ったところにある交通量が少ない道路の2階の物件でしたので、ネットでしか集客が難しそうな点でした。当初はあまり気にしていませんでしたが、今になって振り返ると、立地条件としては中々厳しいものがあったと感じています。物件を決めた後は、契約書類を用意し、物件オーナーによる最終審査を経て、無事入居出来ることになりました。

物件が決定すると、不動産仲介会社の担当者に、内装業者を紹介して頂き、現地で顔合わせと店舗の設備チェックをしました。ネット回線がひけるのか等チェックし、問題なさそうでした。そして、その後、店舗内のレイアウト設計を行う流れとなり、レイアウト設計については非常に多くの自分の考えをお伝えさせて頂きました。と言うのは、自分の事業として人生で初めて世の中にサービスを提供することになるため思い入れが強く、かつ、楽しみで仕方なかったので、四六時中レイアウトのアイデアを考えていました。そして自分のアイデアを内装業者の担当者へ共有し、それを設計士が確認しアドオンで提案をしてくれるので、その提案に対して自分の意図を添えて再提案をし、コスト感も念頭に置きながら形作っていきました。

並行して、内装工事費用を調達するために、日本政策金融公庫を訪問し、プレゼンテーションを行いました。事前に提出すべき資料が山ほどあり、中々負担がありました。また、プレゼンテーションの質疑応答時に、当コワーキングスペース事業を実施する動機や競合店に対する競争優位性、等、様々な角度から質問がありました。公庫の担当者が当初仰っていたのは、コワーキングスペースは非常に採算が取れない事業なので、満額での融資(1,000万円)が困難である可能性が高いとのことでした。その際、私はコンサルティング事業も並行して行う予定で、コンサルティングは過去に実務経験があるので、返済は問題ない旨をお伝えしましたが、公庫としては、融資リスクの判断は当該法人が運営している全ての事業に対してするのではなく、原則、融資を得て運営する事業だけを見て判断する旨を仰っており、公庫によるリスク判断の視点を学ぶことが出来ました。ただ、法人代表者としての過去のキャリアや事業に対する想い、自己資金の量、提出必須資料のスムーズな提出、等、総合的に判断され、審査開始から約2~3週間ほどで、満額で融資されることが決定しました。内装費用をまかなえるため安心しました。ただ、一点問題があり、融資の資金は、信用金庫の法人口座でないと振込が不可である旨を言われました。なお私はコスト削減のため、それまでバーチャルオフィスを本店所在地として契約していたのですが、信用金庫の担当者へ法人口座開設の交渉をした際、法人の本店がバーチャルオフィスだと法人として実態が存在するのか分かりずらく、反社等のリスクを排除できないため、法人口座開設が不可であることを言われました。そこで、コワーキングスペース運営のために借りた物件を本店とした移転登記を実施すれば問題ないとのことでしたので、急遽、本店の移転登記を実施して完了後、信用金庫で法人口座開設の手続きをし、後日、無事、公庫から入金がされました。なお、渋谷区から新宿区への区を跨いでの移転登記の場合、6万円かかります。中々手痛い出費でした。

コワーキングスペースを運営しながらも収益の不足分はコンサルティング事業で補充しようと考えていたため、無人での店舗運営が可能となる様にIOT技術を活用した入退室システム(出入口の施錠管理システム)の導入を検討・実施しました。導入するシステムを検討するにあたっては、運営するコワーキングスペースのサービス内容を固める必要があり、自スペースの場合、月額会員以外に、ドロップインサービスも提供したいと考えていたため、複数社の入退室システムを比較して上記サービスが提供可能となる株式会社構造計画研究所のRemoteLOCKというシステムを導入することにしました。そして、ドロップインサービスを提供する場合、入退室システムに対して会議室の予約システムの情報を連携(APIで連携)する必要がありますが、その予約システムの仕組み上、ドロップインに対応できる設定の可否を確認し、可能であったRESERVA社の予約システムを導入することにしました。ドロップインの料金は、例えば最初の1時間は400円、3時間は1,000円、5時間は1,200円、それ以上利用する場合は1,500円の様に、利用時間が長くなるにつれて割安となる様な料金設定が業界のスタンダードであるため、その様な設定が予約システム上、可能なのか、何度も自分でテストを実施したりコールセンターへ電話で照会してチェックをしました。

そこまで終わったら次はWebサイトに訪問して頂いた利用者を予約システムへ遷移させるための予約ボタンをWebサイトに配置する必要がありますが、分かりにくいと訪問者が離脱してしまいますので、どの年齢層の方が操作しても予約がスムーズに出来る様に簡潔なWebサイトを、自分で0から構築・作成しました。

また、月額会員の毎月の利用料金を回収するため決済代行会社と契約する必要があり、複数社比較して、メタップスペイメント社の会費ペイというサービスを利用することにしました。

さらに、椅子・机、等の什器についても店舗イメージに合わせて選定しました。店舗イメージは木製素材をメインとした自然の雰囲気をコンセプトにしていたので、木の質感が出ている机を選定しました。また、椅子に関しては、様々なショールームを訪問して何度も座り心地をチェックしました。ニトリ社のレザータイプの椅子やオフィスコム社のレザータイプの椅子が、リーズナブルだが抜群の座り心地で非常にコスパが高かったので購入しました。特にオフィスコム社の椅子は、コワーキングスペースのお客様から評判が良かったです。什器の購入時は、同じ商品をまとめ買いするのですが、連日、約20万円程、購入する形となりました。ついこの間までサラリーマンだった者が、毎日20万円を消費するという習慣がなかったので、メンタル的に削られる感覚がありました。。。この様な場面に直面すると総務担当者がいれば精神面での負担を負わないのだなぁと感じました。そして、購入した商品が後日、大量に届くのですが、到着後、大変だったのが組み立てでした。机18席分+椅子50個分を組み立てましたが、量が多く、冬の1月頃に、朝・昼・夜問わず、一人で1日中、組み立て作業をしておりました。非常に手が痛くなりましたが全て懐かしい思い出です。

あと、インターネットを利用するために必要なネットワーク回線を契約するために事業者の選定を行いました。回線事業者の料金を見ると、1ヶ月で2万円~5万円ほどかかる業者が大半で、毎月のランニング費用を抑えたかったので、他のコワーキングスペースのオーナーにコンタクトをとってどの様な業者を使っているのかヒアリングさせて頂きましたがその方は関西の方だったので、東京にはサービス提供していない業者(eo光)を使っており、契約は出来ませんでした。そこで内装業者に、良い回線業者を知っているか伺ったところ、東名という会社は良いと伺いましたので早速電話をし費用感を確認しました。すると1ヶ月で7,000円程度で利用可能との回答があり魅力的だったので、店舗に来てもらい施設確認をしてもらうことにしました。現地調査の結果、回線は問題なくひけるのだが、ネットワークのセキュリティ強化のために、UTMという装置を設置すべきであるという提案を受け、そのコストが機器リース代として7年で約98万円かかると言われました。小規模事業者である自分にとっては想定外に大きなコストで、7年もコワーキングスペースを続けられるか見通しが立たなかったので一度保留し、UTMとは何かを調査して、その後、他のコワーキングスペースオーナーにUTMを導入しているのかヒアリングさせて頂きました。結果、必ずしも導入する必要はないとのことでしたので、その旨を回線業者へ伝えたところネットワークの脆弱性をカバーする代替策は必要とのことで、ハブと2つのルーターを活用して、お客様用と自社用のルーターを分けて使用することでリスクを低減する方法を教えてもらいました。その後、契約手続きをして工事日程を確認したところ、大きな誤算がありました。インターネット回線の設定は自宅用であれば依頼してから、ものの数日~1週間程度で完了するので、その想定でおりました。しかし、事業用はそうはいかないらしく、12月28日頃に契約締結後、工事が出来る最短日が2月5日頃である旨の連絡がありました。回線の設定工事が遅くなる影響で店舗の開業が遅くなる状況となってしまいました。既に家賃が発生している状況なので、早めに動いていれば・・・と悔やみましたが、もし11月下旬~12月上旬頃に動いていたとしても法人口座開設の手続きやら何やらで自分のリソースに余裕がなかったと思うので、気持ちを切り替えてその他の不足している備品の購入、等の準備を進めました。なお、まだまだ記載したいことはありますが、量が多くなってしまいますので、省略させて頂きます。そして、2020年2月21日に開店しました。準備を始めて7ヶ月近くかかりました。

■開店後

開店したものの、全くお客様は来ませんでした。最初はGoogleMyBusinessだけを使用して店内の写真を100枚ほど投稿し集客を行っていました。当時、新型コロナウィルスが流行し出してニュースでも危険性を伝える報道が連日されたタイミングでした。あまりにも客足が無いので、空きスペースを借りたい人・貸したい人を繋ぐプラットフォームである、スペースマーケット、インスタベース、スペイシーを活用して集客を図りました。すると、インスターベスにて初めてドロップイン利用のお客様から予約が入りました。開業してから3週間後のことです。その方はWeb会議をしたいとのことで会議時間より少し早めに来店して準備をされていました。途中、Wi-Fiがうまく繋がらないとのことで、私が使っているPCを貸し出してWeb会議をされていたのですが、やりとりをしていた際、よく聞くと私が通っていたグロービス経営大学院の本科生の方でした。初めてのお客様が自分と接点がある方だったので非常に驚きました。

その後は、プラットフォーム経由で予約される方が多かったものの、少しずつですが、自社のWebサイト経由で予約して頂ける方も出てきました。なお運営者である私としては、店舗は完全予約制・無人での運営形態を原則としていたので、お客様が入退室システムを難なく利用できるか気になっておりました。お客様による会議予約が完了した後は、私から入退室システムの鍵を開けるためのパスワードと操作手順をメールで案内するフローになっており、初めて当店を利用されるお客様が来店された際は手順通りに鍵が開けられるか観察させて頂きました。そして、中々解錠できないお客様がいらっしゃった場合は、店内から扉を開けて入室してもらい、何が難しかったのかヒアリングさせて頂き、案内メールの本文の記載内容を変更する等して改善をはかっていきました。また、自分が店舗に不在のタイミングで、手順通りにいくら操作しても解錠が上手くいかないというお客様がいらっしゃった際は、電話で事象をヒアリングして入退室システムの業者へ問い合わせをして解決方法を教えてもらい解決をはかっていきました。その様なトラブル事例を積み上げてトラブルシューティング方法を確立していき、自分が店舗にいなくても運営出来る仕組みを整えていきました。

運営上、最初に悩んだのが価格設定(プライシング)です。神楽坂エリアにあったので高級志向のコワーキングスペースとして運営したいと思い、月額会員の価格を、当初フリーアドレス席は17,600円(税込)、サイレントエリア席は66,000円(税込)で設定していました。他社のコワーキングスペースの価格水準をベースに自店舗の特徴を加味してプライシングしました。ただ、月額会員になって頂けるお客様がしばらく経っても全くいない状況でした。価格に大きな問題はないが新型コロナウィルスの影響でお客様がいないのか、単に価格が高いのか、の切り分けが難しく悩みました。ただ、時勢として一般消費者の所得水準が落ちている状況であり、感染リスクが高い人が集まる場所での運営形態であることも考慮して、料金を少しづつ下げて様子を見ていき、最終的にはフリーアドレス席は11,000円(税込)、サイレントエリア席は39,800円(税込)まで下げてFixしました。すると4月中旬に、初めて月額会員となって頂けるお客様がいらっしゃいました。初のドロップイン利用のお客様の時もそうでしたが、初めて月額会員になって頂けたお客様のことは非常に記憶に残っています。

お客様の職種としては、フリーランスエンジニア、中小企業の経営者、大手企業の会社員、の方々が中心でした。左記のお客様は全て私と属性が近い方でしたので、度々仕事の話で情報交換をさせて頂きました。年齢層で言うと、フリーランスエンジニアの方は20代後半~30代後半、中小企業の経営者の方は40代~50代、大手企業の会社員の方は、20代後半~40代前半、位の方がボリュームゾーンでした。私と同世代の方が多く親近感がありました。

また、通常のコワーキングスペース利用としてだけでなく、映画やYouTubeの撮影で店舗を使用させて欲しい旨の依頼もあり、トータルで10~15回ほど撮影で貸し出しさせて頂きました。中には、KDDI社のCMを手掛けている大手プロモーション会社様から撮影依頼があり現場を使用して頂きました。また、YouTubeの撮影では、スケッチブック様というチャンネルの方々に店舗を使用して頂きました。撮影して頂いた動画はこちら(https://www.youtube.com/watch?v=izRr_lyebZo)になります。

ただ経営面で言えば、家賃325,000円+電気代40,000円+その他諸経費10,000円程で約375,000円の出費が毎月ありましたが、売上は2年目でも130,000円~150,000円位で停滞していました。そのため、コワーキングスペース事業の赤字を補うためにコンサルティング事業を実施していましたが、資金力が無いため次第にコンサルティング事業に多くの時間を割かざるを得なくなり、自分が興味があって始めたコワーキングスペース事業に自分のリソースを割けなくなるという矛盾が生じていました。またコワーキングスペースの会員様に会員様同士の交流の機会を提供して、協働の仕組みをご用意することも当初の私の目標としてありましたが、新型コロナウィルスの影響で交流会の開催が困難な状況であったことや、自分が当事業にリソースを割けない状況、また、会員様のニーズとして会員同士の横の繋がりを持つよりは自分の居心地の良い空間で作業に集中したい方も多かったこともあり、自分の理想を実現するのは現状難しいなと感じ、色々と熟考した末、2022年5月31日をもって閉店することにしました。

■閉店後

閉店を決めた後は、店舗を完全に取り壊し原状回復するか、M&Aの事業譲渡の方法で店舗の内装・什器・(コワーキングスペース事業運営のための)機能を残しコワーキングスペースの運営を希望する事業者へ譲渡する、等の方法があり方針を検討しました。自分が作った店舗だったので思い入れもあり残せるのであれば残したい気持ちや、自分のキャリア中で事業譲渡の経験をしてみたい気持ちもありましたが、入退室システムの使い方や会議室予約システムの使い方のレクチャー、予約後の解錠方法の案内メールのレクチャー、Webサイトの譲渡手続き、インターネット回線やウォーターサーバー等の契約者の変更手続き、等、引継ぎ事項が非常に多くコンサルティング事業と並行しながら対応するのは困難であると感じたため、原状回復の方向で開店時にお世話になった不動産仲介会社の担当者へ連絡をしました。

すると、コワーキングスペース事業としての機能は廃棄して、内装や什器の目に見える部分だけは次に入居する事業者で使いたい事業者がいれば引き継ぐことが出来ることを教えてもらいました。メリットは、自分が作ったスペースを残せることや、原状回復費用が発生しないこと、什器廃棄のための作業負担・コストを無くすことが出来ます。それは良いと考えて、内装・什器を引き継いでもらえる事業者を募集する手配を不動産仲介会社に依頼させて頂きました。なお、引き継いでくれる業者がいない場合に発生する原状回復費用がどれくらいになるかも並行して見積もりをして頂きました。解体業者が現場に入り1ヶ月ほどして見積もりが出てきましたが約340万円という金額になりました。自分の予想では100万円位かなと思っており、3倍ほどの金額だったので大変驚きました。これは何としても内装・什器を引き継いでもらえる事業者を探さなくてはという気持ちにシフトし、当初、内装・什器の売却代金として30万円を次の事業者からもらえる金額設定をしていましたが、0円に減額して買い手がつくか様子を見ましたがつかなかったので、最後には引き継いでくれる業者がいれば30万円を贈呈する方向に舵切をしました。するといくつかの事業者から問い合わせが入り、現場を見てもらいました。後日、ある事業者が物件の賃貸申し込みをした旨を不動産仲介会社から伺いました。ただ、事務所ではなく店舗として運営されようとしているとのことで、内装・什器がイメージに合わないので自社で作り直すが、一部、コワーキングスペースで使用した入退室システムと入口付近の造作した衝立については引き継ぎたいとのことでした。その後、物件オーナーによる審査の結果、入居が認められたようで、原状回復費用が発生することが確定となりました。(前運営者である私には次の事業者に対する拒否権はありません。)

次の事業者が7月中旬には入居したいとのことでしたので、急ピッチで店舗内にあった什器の処分をしていきました。机や椅子、等を何とか減らして産廃費用を抑えようとして、ネット検索して良さそうなリサイクルショップへ複数電話連絡をして回収の依頼をしました。ところが新型コロナウィルスの影響で事務所を既に閉鎖した事業者から多くの什器を引き受けているので、無料での回収は不可能で、有料(約30万円)での回収だけは可能との連絡を受けました。ここでも新型コロナウィルスの影響を受けるのか・・・と思いましたが仕方ありません。ただ、近所にリサイクルショップがあり、状態が良ければ数点は什器を持ち込んでも良いとのことでしたので、椅子を無料で10個ほど、冷蔵庫を1台1,000円で買い取ってくれました。なお、平日の日中はコンサルティング事業で私が廃棄作業が出来なかったのですが、不動産仲介会社の担当者が、残った什器が欲しい方を探して頂いて、だいぶ減らすことが出来ました。大変感謝しております。

最終的には総額310万円まで原状回復費用が減り、もともと入居時に敷金として110万円を支払っていて返却されたため、実質200万円のコストが発生しました。この事業を通じて多くの資金を失いましたが、振り返ると、事業を1から起こし、顧客がいない状態が続いてもあきらめず運用し、事業をクローズするまでの一気通貫での対応が完遂でき、粘り強さや根性といった人間としての底力を磨き上げることが出来たこと、コワーキングスペース事業を通じて多くの方々と知り合えたこと、地域住民の方々に対して社会貢献が出来たこと、等、お金を出し惜しんで貯金したままでは得ることが出来ない貴重な経験を積むことが出来ました。

これからも社会貢献に繋がる事業を積極的に手掛けていきたいと思っております。

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。